目を見れば脳卒中や心筋梗塞のリスクがわかる?「眼底動脈硬化」について眼科医が解説

医師紹介
網膜内科を専門とし、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、近視性網膜疾患など、視力に大きく関わる網膜疾患の診療・レーザー治療に数多く携わっている。近年は、増加する子どもの近視に強い危機感を持ち、小児の近視進行を抑える治療や生活指導にも力を入れている。また、一般誌やWebメディアでの執筆・情報発信を通じて、目の健康に関する正しい知識の普及に努めているほか、子どもの近視対策を社会全体で考える必要性から、芦屋市政への提言も行っている。さらに、眼科教育サロンを主宰し、若手眼科医や医療スタッフの育成など、後進の教育にも積極的に取り組んでいる。
目次
血管を直接観察できる数少ない器官のひとつである「眼底」
「眼底動脈硬化があります」と健診で言われて、不安になったことはないでしょうか。
眼底とは、目の奥にある網膜や血管、視神経などをまとめた呼び名です。目の中は光を通すために透明になっており、眼底検査や眼底写真を使うことで、体の中で唯一といってよいほど、血管を直接観察することができます。
その血管の状態から、全身の動脈硬化や高血圧の影響を推測できるのが、眼底検査の大きな特徴です。
「眼底動脈硬化」とはどのような状態なのか
眼底動脈硬化とは、簡単に言えば「血管が硬くなり、しなやかさを失った状態」です。
血管が硬くなると、細く見えたり、光の反射が強くなったり、血管同士が交わる部分で静脈が押されるような変化が現れます。
そして重要なのは、この変化の多くが「高血圧」と深く関係している点です。健診で眼底動脈硬化を指摘された場合、目の問題というよりも、まず血圧の状態を確認する必要があります。
「眼底動脈硬化」はどうやって見つかる?
眼底動脈硬化は、主に健診の眼底写真や、眼科で行う眼底検査で見つかります。
眼科では、網膜の血管の太さや色、動脈と静脈が交差する部分の変化などを観察し、血管の硬さやダメージの程度を評価します。
こうした変化は、Scheie分類と呼ばれる方法で、高血圧の影響(H)と動脈硬化そのものの変化(S)に分けて評価されることもあります。
「眼底動脈硬化」を放置するとどうなる?
眼底の血管変化は、単なる“目の所見”ではありません。
眼底に動脈硬化や高血圧の影響が出ているということは、体の他の血管、特に脳や心臓の血管にも同様の変化が起きている可能性があります。
実際に、こうした眼底所見は、脳卒中や心筋梗塞といった病気のリスクと関連することが知られています。
高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、自覚症状がないまま血管にダメージを与え続けます。そしてある日突然、重大な病気として現れることがあります。
「眼底動脈硬化」の治療はできる?
一度硬くなった血管そのものを、完全に元の状態に戻す治療は現時点ではありません。しかし、だからといって放置してよいわけではありません。
治療の目的は、「これ以上悪くしないこと」、そして「全身のリスクを下げること」です。
最も重要なのは血圧の管理です。家庭血圧を定期的に測定し、必要であれば内科で治療を受けることが大切です。また、糖尿病や脂質異常症、喫煙などの影響も大きいため、生活習慣全体を見直していく必要があります。
「眼底動脈硬化」予防のためにできること
予防の基本は、血圧を上げにくい生活です。
塩分を控える、適度な運動をする、体重を適正に保つ、禁煙する、飲酒を控える。こうした基本的な生活習慣の積み重ねが、血管を守ることにつながります。
厚生労働省は、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことを推奨しています。しかし実際にこれを実践できている人は多くありません。
また、脱水を避けることも体調管理として大切ですが、水分摂取は持病によって調整が必要な場合もあります。自己判断で極端に増やすのではなく、体調に応じて無理のない範囲で心がけましょう。
「眼底動脈硬化」を健診で指摘されたらチャンスと考えよう!
眼底動脈硬化を指摘されたとき、多くの方は「悪いことを言われた」と感じます。
しかし見方を変えれば、それは体の血管の状態を早期に知ることができたサインでもあります。
眼底は、体の中の血管を映し出す“窓”のような存在です。症状が出る前に異常を教えてくれる貴重な情報源でもあります。
健診で指摘されたことをきっかけに、血圧を測る習慣を持つ、生活を見直す、必要に応じて医療機関を受診する――その一歩が、将来の大きな病気を防ぐことにつながります。
「まだ大丈夫」ではなく、「今がチャンス」。
そう考えて、できることから始めていきましょう。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。

