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トマトの健康効果とは?リコピンの働き・食べ方・注意点を専門医が解説

公開日: 2026年03月09日
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さまざまな料理で活躍するトマトは、栄養学・疫学の研究対象としてもよく取り上げられる食材です。とくに注目されるのが、赤い色素成分のリコピン(カロテノイド)。この記事では、糖尿病の観点(血糖・インスリン抵抗性)も含めて、研究で示されている「期待できること/言い切れないこと」について金沢駅前内科・糖尿病クリニックの小倉慶雄 院長に解説してもらいます。

医師紹介

金沢駅から徒歩3分の金沢駅前内科・糖尿病クリニックで、「糖尿病」「肥満」「甲状腺」の専門的な治療を提供。患者の生活スタイル・習慣と病状に合わせた最適な治療を得意としている。

トマトにはどんな健康効果が期待できる?

トマトの健康効果でもっとも研究が多いのは、赤色成分のリコピンです。リコピンは抗酸化作用をもち、酸化ストレスや炎症に関与すると考えられています。こうした作用が、動脈硬化や心血管リスクに関わる指標に影響しうる、というのが研究の大枠です。

 

複数の臨床研究をまとめて分析した研究では、トマト製品やリコピン補給が血圧(特に収縮期血圧)を下げる方向の結果が報告されています。一方で、脂質(LDLなど)や炎症マーカーは研究間で結果が一致しないこともあり、「トマトさえ食べれば一律に数値が改善する」とまで断定できる段階ではありません。

 

糖尿病の観点では、トマト(およびリコピン)が血糖やインスリン抵抗性に与える影響が研究されています。以下、詳しく説明します。

  • リコピン摂取を扱った複数の臨床研究などでは、全体として空腹時血糖(FBG)が「低下傾向」とされ、2型糖尿病患者を対象としたサブグループでFBGが有意に低下したと報告されています。ただし、対象となった研究の数はまだ多くなく、研究方法にも違いがあるため、「リコピンを摂れば血糖値が下がる」とまで断定できる段階ではありません。

  • トマトやトマトジュースの摂取について行われた複数の臨床研究をまとめた分析でも、空腹時血糖値への影響が調べられています。ただし、対象者や摂取方法、摂取期間などによって結果が異なる可能性があります。

 

重要なのはトマト単体で効果を期待するより、野菜摂取を増やし、食事全体の質を上げる一要素として活用するという位置づけです。

トマトの健康効果をより引き出す食べ方のポイント

リコピンは脂溶性で、油と一緒に摂ることで吸収が高まりやすいことが示されています。また加熱によって食品の構造が崩れ、リコピンがより体に吸収されやすくなることも知られています。具体的には、トマトソース+オリーブオイル、炒めトマト、ミネストローネなどの食べ方が、トマトの健康効果をとくに高めると言えるでしょう。

糖尿病の観点では「何を食べるか」だけでなく「どの形で摂るか」も重要です。一般に、野菜は丸ごと(食物繊維を含む形)で摂る方が、食後血糖の急上昇を抑えやすい傾向があります。

なので、生のトマト、加熱したトマト(スープ・ソース)を、主食(ご飯・パン・麺)と一緒に「野菜の一品」として食べるのがおすすめです。また、主食・主菜の前に野菜を食べる「食べる順番」を取り入れると、食後血糖の上昇を穏やかにしやすいと考えられます。

食べる目安量は「決まった正解」よりも継続性を意識しましょう。

トマトやリコピンの厳密な推奨量が一律に定まっているわけではありません。糖尿病の食事療法では、単一食品を“薬”のように扱うより、野菜や魚、オリーブオイルなどを中心とした「地中海食」や、野菜や果物、減塩を重視する「DASH食」といった食事パターン全体としての有効性が比較的安定して示されています。トマトはこれらの食事パターンに組み込みやすい食材のひとつです。

トマトの健康効果が低下してしまう調理法・組み合わせはある?

栄養素ごとに「弱点」が違います。リコピンに関しては、加熱はむしろ吸収性を高めるため、「加熱=劣化」とは言えません。一方、トマトに含まれるほかの栄養素、たとえばビタミンCなどは調理条件で失われやすいことがあります。したがって目的に応じて、トマトを使い分けるのが重要です。ビタミンCも摂りたいのであれば生食、リコピンを活かしたいのであれば加熱といった具合です。

糖尿病の観点で注意したいのは、トマトそのものではなく、加糖されたトマトジュースや、糖や塩分が多いケチャップ・ソースを大量に使う食べ方です。

たとえばジュース類は「無糖」表示でも、飲みやすさから量が増えがちです。量を決める、可能なら丸ごとのトマトやスープに置き換えると実践しやすくなります。ケチャップや市販ソースは、使用量と栄養成分表示(糖質・食塩)を確認し、味付けの総量(砂糖・塩)を意識しましょう。

トマトは毎日食べても大丈夫?食べすぎたときのデメリットは?

一般的な食生活の範囲で、トマトを毎日食べること自体は多くの人で大きな問題になりにくいと考えられます。ただし、以下のケースは注意が必要です。

 

注意点1:腎機能が低下している人(高カリウム血症リスク)

糖尿病では腎機能が低下している方も少なくありません。腎機能が低下している場合、血液中のカリウムが高くなることがあり、食事中のカリウム管理が必要になることがあります。病期や透析状況、検査値によりトマト(カリウム)の扱いが変わるため、主治医・管理栄養士の指示に合わせてください。

 

注意点2:胸やけ・逆流性食道炎がある人

トマト(特にトマトソースなど)は、症状を悪化させる人がいます。個人差が大きいので、自己の誘因を見極め、症状が強い場合は摂り方(量・酸味の強い加工品)を調整してください。

 

トマトの中心成分リコピンには、心血管リスク指標への好影響に加え、糖尿病領域では血糖・インスリン抵抗性に関する研究もあります。ただし、「トマト=治療」ではなく、健康的な食事パターンの一部として継続するのが最も安全で現実的です。

参考文献

1.Cheng HM, et al. Tomato and lycopene supplementation and cardiovascular risk factors: a systematic review and meta-analysis. Atherosclerosis. 2017.

2.Inoue T, et al. Effect of Lycopene Intake on the Fasting Blood Glucose Level: A Systematic Review with Meta-Analysis. Nutrients. 2022.

3.Li H, et al. Effect of tomato consumption on fasting blood glucose and lipid profiles: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Phytother Res. 2020.

4.Corrado M, et al. Glycaemic impact of tomato bioactive compounds. Crit Rev Food Sci Nutr. 2025.

5.Cooperstone JL, et al. Tomato and lycopene bioavailability/isomerization(総説). Nutrients. 2015.

6.Jannasch F, et al. Dietary patterns and type 2 diabetes: A systematic review and meta-analysis. J Nutr. 2017.

7.Harvard Health Publishing. GERD diet: foods to avoid.

8.National Kidney Foundation. Tomatoes.

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