病院・薬局検索の病院なび

5分で眠れる=睡眠の質が高い、ではない!?「寝付きが悪い人」に共通する生活習慣【医師解説】

公開日: 2026年04月10日
アイキャッチ画像
「なかなか寝つけない」「布団に入っても目が冴える」――そんな悩みを感じていませんか。一方で、「すぐ眠れるのは良いこと」と思われがちですが、実は必ずしもそうとは限りません。

寝つきの良し悪しは時間だけで決まるものではなく、日中の過ごし方や寝る前の習慣が大きく影響しています。寝つきが悪い原因となる生活習慣や改善のポイントについて、医療法人社団藤和東光会 藤保クリニックの飯島 康弘院長に聞きました。

医師紹介

飯島 康弘の画像
飯島 康弘院長

糖尿病専門医。医療法人社団藤和東光会 藤保クリニック院長。東京医科大学卒。日本糖尿病学会 糖尿病専門医、日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・指導医、日本内科学会 認定内科医。東京都新宿区にて糖尿病外来・訪問診療・有床診療所の運営を行い、「責めない・追い詰めない」をモットーに生活習慣病の診療を実践。教育メディア「メディノト」をnoteで主宰。

布団に入って眠りに落ちるまでは一般的に、平均どれくらい時間がかかるのでしょうか?

健康な成人では、布団に入ってから眠りに落ちるまでの時間(入眠潜時)は、多くの人で20分前後までが自然な範囲と考えられます。

ただし、これはあくまで目安です。5分で眠れる人もいれば、30分近くかかっても問題なく日中を過ごせている人もいます。大切なのは、「何分以内に眠れなければ異常」という一律の基準があるわけではないという点です。


一方で、「5分以内に眠れる」という方は、一見すると寝つきが良いように思えますが、実は慢性的な睡眠不足の裏返しである可能性があります。体が強い睡眠欲求を抱えているために、布団に入った瞬間に意識が落ちてしまう状態です。「すぐ眠れる=睡眠の質が高い」とは限らないことも、知っておいていただきたいポイントです。

「寝つきが悪い」状態は、医学的にはどのような状態と考えられているのでしょうか?

医学的には、布団に入ってから眠りにつくまでに30分以上かかり、それが週に3回以上、3か月以上続いている場合、「不眠症」のひとつのタイプである「入眠困難」に該当する可能性があります。

これは国際的な睡眠障害の分類でも示されている考え方です。

ただし、重要なのは「時間」だけではなく、「本人がつらいと感じているかどうか」と「日中の生活に支障が出ているかどうか」です。寝つくまでに40分かかっても、翌日元気に過ごせているなら、必ずしも病的とは言えません。

逆に、20分程度で眠れていても、布団の中で強い焦りや不安を感じていたり、翌日の集中力低下や倦怠感に悩んでいたりするなら、医療的な対応を検討する価値があります。

寝つきの悪さの背景には、ストレスや生活リズムの乱れだけでなく、うつ病、不安障害、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、甲状腺機能異常などの疾患が隠れていることもあります。

診断基準としては「3か月以上」がひとつの目安ですが、実際には2週間以上続く、あるいは日中の生活への影響が強い場合には、早めにかかりつけ医や睡眠の専門医に相談してよいと思います。

「寝つきが悪い」人に共通する生活習慣や行動には、どのようなものがありますか?

外来で寝つきの悪さを訴える患者さんにお話を聞いていくと、いくつかの共通パターンが浮かび上がります。

もっとも多いのが、就寝直前までスマートフォンを見ていることです。問題は画面の光だけではありません。

SNS、ショート動画、ニュースの連続閲覧は、「次に何か面白いものが来るかもしれない」という予測不能な報酬で脳を興奮状態に保ち続けます。光による体内時計への影響と、内容による脳の覚醒が重なって、寝つきを大きく妨げます。


次に、カフェインの摂取タイミングです。コーヒーだけでなく、緑茶、紅茶、エナジードリンク、栄養ドリンクにもカフェインは含まれています。

カフェインの半減期は個人差がありますがおよそ5〜7時間とされており、15時以降の摂取は就寝時にもまだ体内に残っている可能性があります。


また、「寝酒」の習慣も見逃せません。アルコールには鎮静作用があるため寝つき自体は早まることがありますが、睡眠の後半で眠りが浅くなり、中途覚醒が増えることが知られています。

「お酒で眠れる」は半分正解で半分誤解です。


そのほか、休日の極端な寝坊、寝る直前の激しい運動や熱い入浴、布団の中での仕事メールの確認なども、寝つきを悪くする典型的なパターンです。

共通しているのは、「寝る前の1〜2時間の過ごし方」が睡眠の質を大きく左右するという点です。

「寝つきが悪い」状態を改善するために、日常生活の中で取り入れやすい工夫があれば教えてください

「寝つきが悪い」状態を改善するために、日常生活の中で取り入れやすい工夫があれば教えてください

寝つきの改善で最も大切なのは、「眠る努力」よりも「起きている時間の設計」です。いくつか、取り入れやすいものからご紹介します。

第一に、朝の光を浴びることです。起床後に太陽光を浴びると、体内時計がリセットされ、その約14〜16時間後に眠気が来やすくなります。

つまり、朝7時に光を浴びれば、夜21〜23時頃に自然と眠気が来やすくなるという仕組みです。曇りの日でも屋外の光は室内よりかなり明るいため、カーテンを開ける、通勤で少し歩くだけでも意味があります。


第二に、「寝る時間」を先に決めることです。起きる時間は仕事や学校で固定されがちですが、寝る時間は自分で調整できる余地が大きいです。

たとえば「23時には布団に入る」と決めると、「22時にはスマホを置く」、「21時までに食事を終える」と逆算で生活が整理しやすくなります。


第三に、入浴のタイミングです。就寝の60〜90分前に38〜40℃程度のぬるめの湯に入ると、深部体温が一度上がってからゆるやかに下がり、この「体温の降下」が入眠のきっかけになりやすくなります。

就寝直前の熱い湯は交感神経を刺激して逆効果になることがあるので、タイミングに気をつけてみてください。


第四に、カフェインは15時まで、アルコールは就寝3時間前までを目安にすることです。どちらも完全にゼロにする必要はありませんが、摂取の「タイミング」を意識するだけで寝つきは変わりやすくなります。


最後に、寝室にスマートフォンを持ち込まないことです。充電はリビングで行い、目覚ましは別の時計を使う。物理的に距離を置くのが、実践面では最も確実な方法です。

「今日は寝つきが悪いな…」と感じたときに、実践できる入眠を促すテクニックがあれば教えてください

まず知っておいていただきたいのは、「眠ろう、眠ろう」と頑張るほど、脳は覚醒してしまうということです。これは「睡眠努力のパラドックス」と呼ばれ、不眠の認知行動療法でも重要な考え方です。

布団に入って15〜20分経っても眠れないと感じたら、一度布団から出てください。これは「刺激制御法」という不眠症の認知行動療法の基本テクニックで、「布団=眠れない場所」という脳の学習を防ぐために行います。

別の部屋で、明るすぎない照明のもとで、刺激の少ないこと(紙の本を読む、穏やかな音楽を聴くなど)をして、眠気が戻ってきたら布団に戻りましょう。

呼吸法を試すのも一つの方法です。たとえば、鼻からゆっくり吸って、口からそれより長く吐くことを意識すると、体がリラックスしやすくなる方がいます。いわゆる「4-7-8呼吸法」はその一例ですが、息止めが苦しい方は、無理をせず「吸うより吐くを長めにする」だけでも十分です。

また、「考え事が止まらない」という方には、「心配事の書き出し」が有効です。寝る前に、頭の中にある気がかりをノートに2〜3分で書き出してしまう。

書くことで脳が「いったん外に出した」と認識しやすくなり、布団の中で同じことをぐるぐる考え続ける状態が軽減されやすくなります。

いずれのテクニックにも共通するのは、「眠れない自分を責めない」ことです。眠れない夜は誰にでもあります。一晩眠れなかったからといって、翌日の体がすぐに壊れるわけではありません。

焦りを手放すことが、じつは一番の入眠テクニックかもしれません。

関連記事

※記事の内容は記載当時の情報であり、現在と異なる場合があります。