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「最近、なにを食べてもおいしくない…」その原因、もしかして栄養不足かも?【医師解説】

公開日: 2026年05月01日
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人体は、さまざまな栄養素によって支えられています。そのバランスが崩れると、思いがけない不調として現れることもあります。

なかでも亜鉛は、「体をつくる」「体を守る」「体を治す」ために必要な栄養素です。亜鉛が足りないと体にどのような変化が起こるのでしょうか。役割や不足のサイン、効率的な摂り方について、豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニックの澤口 達也院長に解説してもらいました。

医師紹介

医師、医学博士、糖尿病専門医、認定内科医。豊洲内科・糖尿病 / 形成・美容外科クリニック院長。糖尿病をはじめとする生活習慣病に加え、専門である甲状腺疾患や内分泌疾患(下垂体・副腎疾患、男性更年期障害(LOH症候群)など)の診療も数多く行う。その他、内科開業医として、発熱・微熱、倦怠感、呼吸苦、腹痛等様々な主訴の方々の診療も行っている。

亜鉛は人体においてどのような役割があるのでしょうか?

亜鉛は、体にとって欠かせない必須微量ミネラルのひとつです。

「微量」とは必要量がごく少ないという意味ですが、役割が小さいわけではありません。実際には、体の中で多くの酵素やたんぱく質の働きに関わっており、細胞が正常に増えたり、傷んだ組織が修復されたり、免疫がきちんと働いたりするために重要な栄養素です。

とくに、DNAやたんぱく質の合成、細胞分裂、創傷治癒、成長・発育、味覚の維持、免疫機能の維持に深く関わっています。

もう少しかみ砕いていうと、亜鉛は「体をつくる」「体を守る」「体を治す」ために必要なミネラルです。

子どもでは身長や体重の伸び、成人では皮膚や粘膜の健康維持、感染症に負けにくい体づくり、味を感じる働きなどに関わっています。そのため、亜鉛が十分に足りていないと、見た目には小さな不調に見えても、じつは体のさまざまな場所に影響が及ぶことがあります。

また、亜鉛は美容や健康の文脈で語られることも多い栄養素ですが、本質的には「美容成分」というより、全身の基本機能を支える土台に近い存在です。

皮膚や毛髪、爪の状態に関わるのも事実ですが、それだけではなく、食欲、味覚、免疫、妊娠・授乳期の栄養、男性・女性の生殖機能にも関与します。

つまり、年齢や性別を問わず大切な栄養素だといえます。

亜鉛が不足すると、人体のどのような悪影響があるのでしょうか?

亜鉛が不足すると、まず比較的気づきやすい変化として、味覚が鈍くなる、食欲が落ちる、口内炎ができやすい、肌荒れや湿疹が出る、抜け毛が増える、傷が治りにくいといった症状がみられます。

日本臨床栄養学会の診療指針でも、亜鉛欠乏症の症状・所見として、皮膚炎、口内炎、脱毛、難治性の褥瘡、食欲低下、発育障害、性腺機能不全、易感染性、味覚異常、貧血、不妊症などが挙げられています。

たとえば、最近「何を食べても味がぼんやりする」「口の中のトラブルが続く」「風邪をひきやすくなった」「小さな傷なのに治りが遅い」といった状態が続く場合、原因はひとつではありませんが、その中に亜鉛不足が隠れていることがあります。

亜鉛欠乏の初期症状として食欲低下、成長や発達の遅れ、脱毛、だるさ、いらいら、味覚や嗅覚の低下、発疹、創傷治癒の遅れなどが紹介されています。

子どもの場合は、亜鉛不足が続くことで体重が増えにくい、身長が伸びにくいといった発育面への影響が出ることがあります。

大人では、貧血や生殖機能への影響が問題になることもあります。男性では精子形成の低下、女性では妊娠しにくさとの関連が指摘されており、妊娠中の亜鉛不足は低出生体重児や早産のリスク上昇と関連する可能性があります。

「亜鉛不足になると特定の病気そのものを発症する」というより、亜鉛欠乏症という栄養障害が起こり、その結果としてさまざまな不調や機能低下が出ると考えるのが正確です。

ただし、亜鉛不足はある日突然起こるわけではなく、背景に偏食、食事量の不足、消化吸収の低下、慢性疾患、薬剤の影響があることも少なくありません。

とくに、炎症性腸疾患、セリアック病、慢性肝疾患、慢性腎臓病などでは亜鉛不足がみられやすく、利尿薬の一部でも血清亜鉛濃度が低下することがあります。

なお、ここで大事なのは、これらの症状は亜鉛不足だけに特有ではないという点です。

たとえば脱毛やだるさ、皮膚トラブル、食欲低下などは、鉄欠乏、甲状腺の病気、睡眠不足、ストレス、別の皮膚疾患などでも起こります。そのため、「症状がある=必ず亜鉛不足」とは限らず、必要に応じて医療機関で原因を見極めることが大切です。

自身が亜鉛不足かどうかを知るためのサインがあれば教えてください

亜鉛不足を疑うきっかけとしては、まず味覚の変化がわかりやすいサインです。

以前より味が薄く感じる、食べ物のおいしさがわかりにくい、何となく食欲が出ない、といった変化は注意したいポイントです。ほかにも、口内炎を繰り返す、肌荒れや湿疹が長引く、抜け毛が増えた、傷が治りにくい、風邪などの感染症にかかりやすいといった変化も、亜鉛不足のサインとして挙げられます。

また、子どもでは成長の遅れがヒントになることがあります。食事量はそれなりにあるのに、体重や身長の伸びがよくない場合、原因のひとつとして亜鉛不足が検討されることがあります。

大人では、なんとなく不調が続く中で、皮膚・粘膜・毛髪・食欲・味覚に複数の変化が重なっているときに疑いやすくなります。

ただし、実際には自分だけで見分けるのは難しいことが少なくありません。なぜなら、亜鉛不足の症状は非常に“ありふれた症状”でもあるからです。

たとえば、口内炎は疲れでもできますし、脱毛や皮膚症状はホルモンバランスや皮膚疾患でも起こります。

したがって、「いくつかの症状が続いている」「食事に偏りがある」「持病や内服薬の影響がありそう」という場合に、亜鉛不足を疑ってみる、というのが現実的です。

診断の目安としては、医療機関で血清亜鉛値を調べます。日本臨床栄養学会の2024年の指針では、血清亜鉛値60µg/dL未満を亜鉛欠乏、60~80µg/dL未満を潜在性亜鉛欠乏と評価することが推奨されています。

加えて、症状があること、ほかの病気が否定されること、亜鉛補充で症状が改善することも診断に重要です。また、血清亜鉛は時間帯や食事の影響を受けるため、早朝空腹時の採血が望ましいとされています。

一方で、血液検査の数値だけで単純に判断できないこともあります。

2024年の指針でも、60~80µg/dL未満の「潜在性亜鉛欠乏」の範囲には、症状のない人も含まれるため、症状がないのに数値だけで安易に治療対象とするわけではない、とされています。つまり、「症状」と「検査値」の両方を見て判断することが大切ということです。

亜鉛を効率的に摂取する方法について教えてください

亜鉛を効率的に摂取する方法について教えてください
牡蠣は亜鉛を効率的に摂れる食材のひとつ

亜鉛を効率よくとる基本は、まず食事からしっかり摂ることです。

亜鉛を多く含む代表的な食品としては、牡蠣、豚レバー、牛肉、チーズ、煮干し、ナッツ類、納豆などがあります。

日本臨床栄養学会の指針では、たとえば牡蠣5粒(60g)で約7.9mg、豚レバー70gで約4.8mg、牛肩肉70gで約4.0mg、納豆1パック(40g)で約0.8mgとされています。

数字で見ると、やはり牡蠣や赤身肉、レバーなどの動物性食品は効率よく亜鉛を摂りやすいことがわかります。

また、単に「亜鉛を含む食品を食べる」だけでなく、吸収されやすい形で摂ることも大切です。一般に、肉や魚介類に含まれる亜鉛は比較的利用されやすい一方で、豆類や全粒穀物に多いフィチン酸は、腸の中で亜鉛と結びついて吸収を妨げることがあります。

そのため、植物性食品中心の食事では、亜鉛の摂取量が足りていても、実際の吸収効率が下がることがあります。

ベジタリアンやビーガンの方では、こうした理由から亜鉛の摂取不足や血清亜鉛低値が起こりやすいことが知られています。ただし、工夫は可能です。

たとえば、豆や穀物、種子類を数時間水に浸してから調理する、発酵食品を取り入れるといった方法は、フィチン酸の影響を減らし、亜鉛の利用しやすさを高める可能性があります。

1日の摂取目安も知っておくと実践しやすくなります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、30~64歳の男性の推奨量は9.5mg/日、女性は8.0mg/日です。

さらに、妊娠中期・後期は+2.0mg/日、授乳中は+3.0mg/日の付加量が設定されています。つまり、妊娠・授乳中の方は、ふだん以上に亜鉛不足に注意したい時期といえます。

食事で不足しがちな場合にはサプリメントを使うこともありますが、自己判断で高用量を長期間続けるのは避けるべきです。

亜鉛をとりすぎると、吐き気、胃の不快感、頭痛、食欲低下などが起こることがあります。また、50mg以上を数週間続けるような摂り方では、銅の吸収が妨げられ、銅欠乏や免疫機能への悪影響が問題になることがあります。成人の耐容上限量の目安は40mg/日です。

薬との飲み合わせにも注意が必要です。キノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬は、亜鉛と一緒に飲むとお互いの吸収が落ちることがあります。

その場合は、抗菌薬を亜鉛の少なくとも2時間前、または4~6時間後にずらすことが推奨されています。

また、一部の利尿薬は尿中への亜鉛排泄を増やし、血清亜鉛濃度を下げることがあります。持病で薬を飲んでいる方は、サプリを始める前に医師や薬剤師へ相談した方が安心です。

まとめ

亜鉛は、免疫、味覚、皮膚や粘膜、傷の治り、成長・発育などに幅広く関わる大切なミネラルです。

不足すると、味覚低下、口内炎、肌荒れ、脱毛、食欲低下、感染しやすさ、発育不良など、意外とさまざまな形で不調が現れます。

まずは牡蠣、赤身肉、レバー、チーズ、ナッツ、納豆などを日々の食事にうまく取り入れるのが基本ですが、症状が続く場合は自己判断でサプリに頼りすぎず、血液検査も含めて医療機関で相談することが大切です。

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