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それ、本当に痔や年齢のせい?見逃されがちな「大腸がん」の初期症状とは

公開日: 2026年01月26日
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大腸がんは、日本で罹患数・死亡数ともに多い代表的ながんのひとつですが、初期にははっきりした症状が出ないことも少なくないそうです。血便や便通の変化、原因不明の貧血など、「年齢や体調のせい」と見過ごされがちなサインが、早期発見の重要な手がかりになることもあります。

本記事では、大腸がんの基礎知識から、見逃されやすい初期症状、受診を考える目安までを、医師の解説をもとにわかりやすく紹介します。

教えてくれたのは、半蔵門 渡海消化器・内視鏡クリニックの渡海 義隆院長です。

医師紹介

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渡海 義隆院長
日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会学術評議員

2008年筑波大学医学専門学群(現・筑波大学医学群医学類)卒業。2008年4月がん・感染症センター都立駒込病院にて研修、2017年4月がん研究会有明病院消化器内科、2021年4月より上部消化管内科医長、2023年9月より頭頸部がん低侵襲治療センター兼務。2024年に半蔵門 渡海消化器・内視鏡クリニックを開院。「来てよかった」と思ってもらえるようなクリニックの雰囲気づくりや外来での丁寧な診察、これまでの経験を活かした質の高い内視鏡検査および治療を一人ひとりに提供することを第一に心がけて診療を行っている。

「大腸がん」とはどのようなガンでしょうか?どのような特徴をもつがんか、発生部位、日本での患者数や傾向などを教えてください。

大腸がんは、大腸壁のもっとも内側に存在する粘膜に発生する悪性腫瘍で、多くは腺がんです。

腺腫(ポリープ)ががん化して生じるものと、正常な粘膜から直接発生するものがあり、進行に伴って腸壁の深部へ浸潤し、リンパ節や肝臓・肺などへ転移することがあります。

発生部位は、日本の院内がん登録データ(2022年全国集計・自施設初回治療開始例)によると、S状結腸が最も多く約26%、次いで直腸が約22%、上行結腸が約16%と報告されています。

リスクとしては加齢の影響が大きく、家族歴や遺伝性腫瘍、炎症性腸疾患などの背景に加えて、喫煙、飲酒、肥満、加工肉・赤肉の摂取などの生活習慣が関与するとされています。身体活動(運動)はリスク低下と関連し、食物繊維の摂取はリスクを下げる可能性が示されています。

日本のがん統計では、大腸がんは2021年に154,585例(男86,271/女68,314)が新たに診断され、罹患数は男女計で1位(男性2位・女性2位)です。死亡数は2024年に54,416人(男28,826/女25,590)で、男女計2位(男性2位・女性1位)と、罹患・死亡の両面で重要ながんです。

<参考文献>
・国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」
・国立がん研究センター がん統計「大腸」
・国立がん研究センター がん統計「最新がん統計」
・国立がん研究センター「結腸および直腸 Colon and Rectum(C18-C20)」
・国立がん研究センター「大腸がんファクトシート 2024」

「大腸がん」の代表的な症状を教えてください

代表的な症状は、

  • 血便(便に血が混じる、トイレットペーパーに血が付く、便器の水が赤く染まる)
  • 便通異常(下痢・便秘が続く、交互に起こる、便が細くなる、残便感がある)
  • 腹痛、腹部膨満感
  • 原因不明の貧血(鉄欠乏性貧血)やだるさ
  • 体重減少

などです。

ただし、大腸がんはとくに早期では無症状のことも多く、「症状がないから大丈夫」とは言い切れません。また、症状の出方は大腸がんの発生部位によって異なる傾向があります。

たとえば、大腸がんが進行すると腸閉塞の症状が出ることもありますが、体の右側(上行結腸など)では便がまだ柔らかく、腸管腔が狭くなっていても便が比較的通過しやすいため、腸閉塞の症状が前面に出にくいという特徴があります。つまり、自覚症状が乏しく、貧血や全身倦怠感で気づかれることがあります。

一方、体の左側(S状結腸・直腸など)では便が固くなっているため、進行がんになると腫瘍と便がこすれて血便が出現したり、腸閉塞の症状や便が細い・残便感が出やすかったりする傾向にあります。

「大腸がん」の初期症状で、見逃されがちな症状/体の異変を教えてください

見逃されやすいのは、「痔のせい」「年齢のせい」「ストレスのせい」と自己判断してしまうような症状です。具体的には、

  • 少量の血便が続く(鮮血でも暗赤色でも)
  • 便が細い/出し切れない感じ(残便感)
  • 便通リズムの変化(急に下痢や便秘が増えた、交互に起きる)
  • お腹が張る/ガスが増える
  • なんとなく疲れやすい(じつは鉄欠乏貧血が進んでいる)

などです。

初期は痛みなどの強い症状が出ないことも多く、「軽い変化が続く」ことがポイントになります。また、便潜血検査で陽性になっても「体調が良いから」と放置されて見つかるケースもあるため、検診結果のフォローも重要です。

一時的な体調不良と、「大腸がん」の初期症状を疑ったほうがよい状態を見分けるヒント

一時的な胃腸炎や食事の影響による下痢・腹痛は、数日〜1週間程度で改善に向かうことが多い一方、大腸がんを含む器質的疾患では、症状が持続したり、再燃・反復したりすることが特徴的です。

とくに血便(下血)、便通の変化、貧血などは大腸がんで見られる代表的な症状で、自己判断で様子見して長引かせないことが重要です。

目安として、以下に当てはまる場合は医療機関への相談を推奨します。

  • 原因のはっきりしない血便が1回でも出た/少量をくり返す
  • 便通異常(便秘/下痢、便が細い、残便感など)が続く/悪化する
  • 原因不明の貧血、体重減少、食欲低下、強い倦怠感がある
  • 50歳以上で原因不明の血便、または血便に腹痛・体重減少などを伴う場合

<参考文献>
・国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
・国立がん研究センター 中央病院「大腸がんの症状」
・NICE guideline NG12 “Suspected cancer: recognition and referral”

医療機関へ相談する場合、どのような内容を伝えるのが望ましいでしょうか?

診察では「何が、いつから、どれくらい、どんなふうに」を具体的に伝えると、必要な検査の判断が早くなります。例えば、

  • 具体的な症状

    血便(色、量、頻度)、便の形(細い・硬い・下痢)、腹痛(場所・強さ)、腹部膨満感・残便感などの有無

  • 症状の経過

    開始時期、良くなった/悪くなった、くり返すかどうか、食事やストレスとの関係など

  • 全身状態

    体重変化、発熱、倦怠感、ふらつきの有無、貧血を指摘されたかなど

  • 既往/背景

    過去の便潜血結果、過去の大腸内視鏡歴と所見(ポリープの有無など)、家族歴(大腸がんなど)など

  • 服薬

    抗血栓薬(血液サラサラの薬)、NSAIDsなど

これらに加え、「心配で確認したい」も立派な受診理由です。便の写真や便潜血検査の結果票など客観的情報があれば、持参すると説明がスムーズで医師も理解しやすいです。

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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。