【医師解説】「男性更年期障害」を見分ける2つのポイントとは?年齢やストレスのせいと我慢しないで!

医師紹介
医師、医学博士、糖尿病専門医、認定内科医。豊洲内科・糖尿病 / 形成・美容外科クリニック院長。糖尿病をはじめとする生活習慣病に加え、専門である甲状腺疾患や内分泌疾患(下垂体・副腎疾患、男性更年期障害(LOH症候群)など)の診療も数多く行う。その他、内科開業医として、発熱・微熱、倦怠感、呼吸苦、腹痛等様々な主訴の方々の診療も行っている。
目次
「男性更年期障害」とは、医学的にはどのような状態を指すのでしょうか?
一般的に「男性更年期障害」と呼ばれていますが、医学的には「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」という名称で定義されています。
これは、加齢に伴い男性ホルモン(テストステロン)が低下することによって引き起こされる、心身および性機能の不調の総称です。女性の更年期障害が閉経前後の急激なホルモン変化によって生じるのに対し、男性の場合はテストステロンが緩やかに減少していくため、発症時期や期間に個人差が大きいのが特徴です。
主な症状は多岐にわたり、「なんとなく不調」という曖昧なものから、「のぼせ・発汗(ホットフラッシュ)」「筋力低下」といった身体症状、「イライラ・抑うつ・不安感」といった精神症状、そして「性欲減退・勃起不全(ED)」といった性機能症状が現れます。これらが組み合わさって日常生活に支障をきたす状態を指します。
LOH症候群を疑う患者さんが来院された場合には、AMSスコア(男性更年期障害質問票)により重症度を把握しつつ、血液中の遊離テストステロン(フリーテストステロン)を評価し、一定の基準を満たす場合に治療を検討します。
「男性更年期障害」は、どのような人がなりやすいのでしょうか?
基本的には40代以降の男性であれば誰にでも起こりうるものですが、とくに生活習慣・併存疾患が大きく関係します。具体的には、肥満(内臓脂肪型)・メタボ、2型糖尿病、睡眠不足や睡眠時無呼吸、運動不足、過度の飲酒、喫煙がある方は、テストステロンが下がりやすく症状も出やすい傾向があります。
海外ガイドラインでも、LOHは単純な老化だけでなく、肥満などの併存疾患と強く結びつくことが強調されています。
テストステロンは、加齢だけでなくストレスによっても分泌が抑制されます。そのため、仕事で責任ある立場に就いている方、人間関係の悩みを抱えている方、不規則な生活や睡眠不足が続いている方は要注意です。また、定年退職や子どもの独立といった「環境の大きな変化」により、社会的役割や目標を喪失したタイミングでガクンとホルモン値が下がり、発症するケースも少なくありません。
つまり、「年齢による衰え」と「生活習慣」「併存疾患」「社会・環境的なストレス」の複合要因が重なった時に、なりやすいと言えるでしょう。
「男性更年期障害」は、仕事の不調やメンタルの問題と混同されやすいと言われますが、どのような点が見分けるヒントになるのでしょうか?
非常によく似ているため専門医でも慎重な判断が必要ですが、見分ける最大のヒントは「身体的な症状」と「性機能の症状」が伴っているかどうかです。
うつ病などのメンタル不調の場合、気分の落ち込みや意欲低下が主症状となりますが、男性更年期障害(LOH症候群)の場合は、メンタルの不調に加え、以下のようなサインが現れることが多いです。
●特有の身体症状
突然のほてりや発汗(ホットフラッシュ)、原因不明の関節痛や筋肉痛、極度の疲労感。
●性機能の低下
朝立ち(夜間睡眠時勃起現象)の消失、性欲の著しい減退、ED。
とくに「朝立ちがなくなった」「性的なことに関心がなくなった」という変化は、うつ病単独では説明しづらく、男性ホルモンの低下を示唆する重要なサインです。「心の薬を飲んでも良くならない」という場合、実は背景にホルモン低下が隠れていることが多々あります。
どのような状態が続く場合に、「単なる疲れや加齢ではないかもしれない」と考え、医療機関への相談を検討すべきでしょうか?
判断の目安として、「十分な休息や睡眠をとっても回復しない不調」が「1か月以上続いている」場合は、医療機関への相談を検討してください。
単なる疲れであれば、週末にゆっくり休んだり、趣味を楽しんだりすることでリセットできるはずです。しかし、「休んでも疲れが抜けない」「以前楽しめていた趣味に関心が持てない」「理由もなく不安になったりイライラしたりして、仕事のパフォーマンスが明らかに落ちている」といった状態が続くなら、それは身体からのSOSサインです。
その他、「性欲低下/朝立ちが減った/EDが続く」、「筋力低下・体脂肪増加(特に腹部)が進む」、「ほてり、発汗、いらだちなどの自律神経症状がつらい」、「骨粗鬆症や原因不明の骨折、貧血などが指摘された」といった場合にも受診を検討してください。
また、先に記載した「AMSスコア(男性更年期障害質問票)」というセルフチェックシートもWEB上で公開されていますので、そちらを試してみるのも有効です。
このスコアが高い場合、客観的にも治療が必要な状態である可能性が高いため、受診の強い後押しになります。「歳のせいだ」と我慢し続けると、症状が悪化し、生活習慣病のリスクを高めることにも繋がりかねません。
「男性更年期障害」になった場合、どのような治療が行われるのでしょうか?また、予防方法があれば教えてください。
まず重要なのは、睡眠の改善、減量(とくに内臓脂肪)、有酸素+筋トレ、飲酒量の適正化、禁煙、ストレス対策などで、これだけでも症状が軽くなる方は少なくありません。欧州ガイドラインでも、LOHが疑われる男性は肥満や併存疾患を抱えることが多く、体重管理や生活改善が極めて重要とされています。
血液検査で低テストステロンが確認され、症状が強い場合には、利益とリスクを説明した上で、男性ホルモン補充療法(TRT)を行います。これは最も直接的な治療法です。今のところ注射剤のみが保険適用となっており、月1~2回程度、定期的にテストステロンを補充します。劇的に症状が改善する方もいらっしゃいます。
また補助的に対症療法として、症状に合わせた漢方薬や、ED治療薬、抗うつ薬などを使用します。
予防としては、結局いちばん効果的なのは「ホルモンを下げにくい生活」=睡眠・体重管理・運動・ストレスの4本柱です。とくに中年以降は、筋肉量維持(筋トレ)と睡眠の質改善が、活力や性機能の面でも効いてきます。適度にストレス発散もしつつ、亜鉛(牡蠣やレバーなど)やタンパク質を積極的に摂り、良質な睡眠を確保して自律神経を整えることが重要です。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。
