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2週間以上続く咳や痰は要注意?じつは「肺がん」の初期症状かもしれない体の異変とは

公開日: 2026年02月16日
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日本におけるがん死亡原因の第1位とされる肺がんですが、初期にはほとんど症状が出ないことも多く「風邪が長引いているだけ」と見過ごされるケースも少なくありません。咳や血痰、息切れといった肺がんのサインになり得る症状について、林外科・内科クリニックの林裕章理事長に解説してもらいました。

医師紹介

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林 裕章理事長
日本外科学会外科専門医
日本抗加齢医学会専門医
日本骨粗鬆症学会認定医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定スポーツ医

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、その人その人に合った「人」を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域のかかりつけ医として総合診療を行っている。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。

「肺がん」とはどのようながんでしょうか?発生部位、日本での患者数や傾向などを教えてください

肺がんは、気道である気管支や、ガス交換を行う肺胞の細胞が何らかの原因でがん化して増殖する疾患で、進行すると周囲臓器(胸膜・縦隔)への浸潤や、リンパ節・脳・骨・肝などへの転移を起こしやすいのが特徴です。

病理(組織型)として臨床上は大きく以下の2つに分類されます。

  • 非小細胞肺がん(NSCLC):腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなど
  • 小細胞肺がん(SCLC):進行が速く、薬物療法・放射線が主軸になりやすい

これらは治療方針が大きく異なります。

手術(根治切除)が主役になりやすいのは主に非小細胞肺がんです。腺がんは肺の奥(肺野部)にできやすく、初期はほぼ無症状で進行するのが特徴です。一方、喫煙との関連が深い「扁平上皮がん」や「小細胞がん」は、肺の入り口付近(肺門部)に発生しやすい傾向があります。

国立がん研究センターの統計で、2021年の肺がん罹患数は12万4,531例、2024年の死亡数は7万5,569人とされています。日本における統計では、肺がんはがん死亡原因の第1位となっており、非常に注意が必要な疾患です。

かつては「タバコ=肺がん」のイメージが強かったのですが、近年はタバコを吸わない女性にも多い「腺がん」が全体の過半数を占めています。

「肺がん」の代表的な症状を教えてください

肺がんの代表的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 持続する咳(せき)
    最も一般的な症状ですが、風邪と見分けがつきにくいのが難点です。
  • 血痰(けったん)
    痰に血が混じる現象です。これは肺がんを強く疑う非常に重要なサインです。
  • 胸痛
    がんが胸膜(肺を包む膜)や胸壁に浸潤すると、呼吸に合わせて痛みを感じることがあります。
  • 息切れ、呼吸困難
    がんによって気道が狭くなったり、胸水が溜まったりすることで起こります。
  • 全身症状
    原因不明の体重減少、倦怠感、発熱などが続くこともあります。

これらの症状は、がんが発生する部位(肺の入り口付近か、奥の方か)によっても現れ方が異なります。とくに「血痰」が出た場合は、たとえ少量であっても放置せず、すぐに専門医を受診してください。

ただし、前提として重要なのは「症状があっても肺がんとは限らない」一方で、「症状がなくても肺がんの存在は否定できない」点です。とくに末梢型の早期肺がんは無症状が多く、症状ベースの発見には限界があります。

「肺がん」の初期症状で、見逃されがちな症状あるいは体の異変を教えてください

まず、肺という臓器は、内部に痛みを感じる神経がないため、がんが小さいうちは「全くの無症状」であることが珍しくありません。

仮に症状が出たとしても、「よくある不調」に見えるタイプも多いです。具体的には以下のような症状です。

  • “風邪っぽい咳”が2~3週間以上続く/だんだん強くなる
  • 治ったと思ったのに、同じ側で肺炎・気管支炎を繰り返す(腫瘍で気管支が狭くなり、感染が起きやすくなることがあります)
  • 軽い血痰(一回だけ・少量で終わると放置されやすい)
  • 息切れ(加齢や運動不足のせいにされやすい)
  • 声がれ(嗄声)(喉の炎症扱いで長引く)
  • 原因不明の体重減少・食欲低下・だるさ

がんのできる場所にもよりますが、これらの症状が出るころは「まだ日常生活は送れるが、放置すると危ないサイン」として出てくることがあります。症状の有無だけで早期かどうかは決められません。特に「ずっと続く」場合は要注意です。

さらに、なかには意外な初期症状が現れるケースもあります。

  • 声のかすれ(嗄声)
    喉の異常と思われがちですが、肺のがんが声を司る神経(反回神経)を圧迫することで起こります。
  • 肩こりや背中の痛み
    肺の先端(肺尖部)にがんができると、近くの神経を刺激し、肩や腕のしびれ・痛みとして現れることがあります(パンコースト腫瘍)。
  • 顔や首のむくみ
    肺の入り口付近のがんが大きな血管(上大静脈)を圧迫し、血流が滞ることで顔が腫れぼったくなることがあります。

これらは一見、呼吸器とは無関係に思えるため、整形外科や耳鼻科を受診して発見が遅れることが少なくありません。

一時的な体調不良と、肺がんの初期症状を疑ったほうがよい状態を見分けるヒントがあれば教えてください

最もシンプルで重要な指標は「2週間の法則」です。

通常の風邪や気管支炎であれば、症状のピークは数日で、長くても2週間以内には改善に向かいます。もし、「咳や痰が2週間以上経っても全く改善しない、あるいは悪化している」場合は、一時的な体調不良ではなく、肺がんを含む深刻な病気を疑うべきサインです。

また、抗菌薬などで一旦よくなっても、同じような症状(同じ部位の肺炎など)が短期間で再燃する「反復性」も要注意です。

あるいは「症状の質の変化」にも注目してください。喫煙者の方で「いつものタバコによる咳」だと思っていても、その咳の頻度が増えたり、音が変わったり、痰に血が混じったり、胸痛や息切れがセットで出現した場合は要注意です。

また、これといった理由がないのに「1ヶ月で体重が数キロ減った」というような全身性の変化も、がんを疑う重要なヒントになります。

そして現実的にいちばん大事なのは「肺がんかどうかを自分で決めない」ことです。肺がんでなくても、結核、間質性肺炎、肺塞栓、心不全など“放置しない方がいい病気”が同じ症状を取り得ます。疑うべきは肺がんに限りません。

医療機関へ相談をする場合、どのような内容を伝えるのが望ましいでしょうか?

医師が診断を下す際、患者さんからの「経過の情報」は検査結果と同じくらい重要です。受診時には以下の7点を伝えていただけると、スムーズに精密検査(CTなど)へ繋げることができます。

  1. 喫煙歴
    「1日の本数 × 喫煙年数(ブリンクマン指数)」を伝えてください。過去に吸っていた場合も重要です。
  2. 具体的な症状と期間
    「いつから」「どんな時に(夜間/運動時など)」「どんな症状(咳/痰/血痰/発熱/胸痛/息切れ 等)」が続いているか。良くなっているか悪くなっているか。
  3. 血痰の有無
    回数、量、色。1回でもあったなら必ず伝えてください。
  4. 治療歴
    受診歴・処方薬・効いた/効かなかった など。
  5. 家族歴
    血縁者にがん(特に肺がん)を患った方がいるかどうか。
  6. 職業歴
    アスベストなどの化学物質にさらされる仕事に従事していた経験があるか。
  7. 直近の検査や画像
    検診を受けたか、過去のCTやレントゲンはあるか。

「こんな些細なことで……」と遠慮する必要はありません。私たち専門医は、その「些細な違和感」から早期のがんを見つけ出し、完治を目指すために存在しています。

肺がんは早期に見つけることができれば、現在は手術や低侵襲な治療で十分に克服できる病気です。もし少しでも気になる症状があれば、まずは呼吸器内科や呼吸器外科の門を叩いてみてください。

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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。