ステージ3のがん宣告で「髪が抜けたからこそできる、おしゃれを楽しもう」で一念発起!ヘアロスが"バレん"医療ケア帽子に込めた思い

副作用で髪の毛を失った原さんは、とてもキュートな帽子を開発しました。かぶり心地は快適、手入れは簡単、価格もお手頃でおしゃれな医療用ケア帽子ブランド「BAREN」です。どんな想いから、原さんは「BAREN」を作ろうと考えたのかを聞きました。
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子宮頸がんが発覚したきっかけはぎっくり腰

原さんがステージ3の子宮頸がんと診断されたのは、2021年のことでした。
「当初は整形外科に通っていたのですが、治りかけては何度もぶり返したうえに、下腹部もずっと痛かったんです。きっと、ぎっくり腰以外にも原因があるはずだと考え、婦人科を受診しました。すると、まさかの子宮頸がんが発覚。セカンドオピニオンを経て、即手術となりました。
普段は病院が嫌いで、なかなか足を運ばないんです。ぎっくり腰になっていなかったら、不調を感じつつも病院は後回しにしていただろうし、病気に気づくのも遅れたかもしれません。もしかしたら体が『病気に気づいて!』と必死にサインを送っていてくれたのかも…とさえ思います」
手術後、半年にわたる抗がん剤治療を開始。病院からは「副作用で髪の毛が抜けるから、帽子やウィッグを用意してください」と伝えられました。
原さんは、手に入る限りの医療用ウィッグや医療用ケア帽子を、山のように買い集めるも、テンションは下がる一方でした。
「医療用ウィッグは50万円、100万円くらいする高価なものもあります。そんなに高いのだからと、期待していました。でも、つけてみると何か不自然で…周囲にもバレそうでハラハラするばかり。つけ心地も良くなくて、蒸れて汗だくになるし、締めつけも強くて3分もつけることができませんでした。高かったのに、この見た目とこのつけ心地!?とがっかりしてしまって…」
ウィッグがダメなら、医療用ケア帽子…と、わずかな期待を寄せたものの、そちらもがっかりする結果に。
「髪の毛が抜けた状態で、医療用ケア帽子をかぶると、いかにもドラマに出てくる病人っぽくなってしまいました。だからといって、何もつけずに髪の毛がない状態のままでいるのも気になって…。私は娘が2人いるのですが、当時まだ小学校4年生と2年生。私の髪の毛がない姿は、『ママ、どうしたの?』と不安にさせてしまいます。家族に心配をかけたくない思いが強かったです」
ウィッグは使いたくない、けれど頭は隠したいと、毎日スカーフを頭に巻いて過ごしていた原さん。髪の毛を失ったことを突きつけられるようで、鏡を見るたびに、気持ちが沈んでいきました。
さらに、外れやすさも気になりました。横になっているときは、寝返りを打つとスカーフが取れて、髪の毛の抜けた頭が丸見えになることもあったのです。
同じ悩みを抱える人はきっと他にもいる——1年半かけて完成した理想の帽子

病気で髪の毛を失うことを「ヘアロス」と言います。原さんは、自身の髪の毛が抜けていくなか、ヘアロスについて調べ始めました。
すると、抗がん剤治療の過程でヘアロスになる方が、想像よりもずっと多いと知りました。
「がんは年齢を重ねた人はもちろん、若い人もかかる病気ですが、医療用ウィッグや医療用ケア帽子は、若い人向けのデザインとは言いにくいものも多い印象でした。でも私は、おしゃれが大好き。病気だからといってあきらめたくありませんでした。
むしろ、病気で気持ちが沈みがちなときだからこそ、おしゃれをしてテンションを上げたくて。そこで『可愛いと思える帽子がないのであれば、私が作ろう』と決めました」
原さんは、自分のイメージを形にしてくれるアパレルメーカーを探すことに。
コストが見合わず、なかなか受けてくれるところはなかったものの、ようやく協力してくれるメーカーが見つかります。
つけ心地、見た目、手入れの簡単さなど、原さんの想いを詰め込んだ試作品が完成したのは、1年半後のことでした。
「こだわったことは山のようにありますが、とくに、部分的にウィッグを付けられるようにしようと思っていました。以前、一般的な医療用ケア帽子をかぶったとき、見るからに病人といった外見になってしまって…。どうしてなのか考えてみると、前髪やサイドの髪の毛がなかったからでした。
ほんの少しのことですが、帽子から髪の毛がちらっと見えるだけで、ぐっと自然になります。ピンクや金髪など、普段だったら少し派手に感じる部分ウィッグも用意しました。せっかくだったら髪の毛の抜けた時期にしかできない、振り切ったおしゃれがしたいなと思ったんです」
手入れが簡単なのも、原さんが何度も調整したポイント。
頭は意外に汗をかくものの、ウィッグは自宅で洗うとボサボサになってしまいます。そこで、部分ウィッグは、マジックテープで取り外しができるようにしました。
帽子の部分は洗濯機で丸洗いができるので、ウィッグは傷めずにすみます。どれも原さんが闘病中、「こんなのがあったらいいな」とイメージしていたものなのです。
「BAREN=(髪が抜けたのが)バレん」キュートな意味を込めたブランド名

原さんは2023年3月から、「BAREN」というブランドとして、独自に開発した医療用ケア帽子を販売しています。このブランド名にも秘密が…。
「『髪の毛が抜けたり、ウィッグだったりするのがバレん』というシャレが由来です。こう聞くだけでクスっと笑う人も少なくありません。
私は関西出身だから、シャレや笑いが大好き。大病をわずらったときって、これからどうなるんだろう、髪の毛が抜けてしまうなんて…と、本当に落ち込むんです。そんなときに、少しでも笑って元気になってくれたらいいなと思っています」
帽子を購入した人たちからは「落ち込んでいて外に出ることもできなかったけれど、この帽子を手にしたら、外出できるようになってきた」、「BARENの帽子に合わせたおしゃれを楽しみたい」という前向きな声が続々と集まっているとのこと。
闘病中だからこそ、外見を整えることは、心が満たされる行為でもあるのです。
難病にかかると、病気を治すことが最優先とされ、見た目は二の次になってしまう場合が少なくありません。
けれど、患者の立場からすると、外見が変わってしまうことはとても悲しいことでもあります。
「最近は私の想いに共感し『BAREN』のサンプルを置いてくれる医療機関も少しずつ増えてきました。見た目もケアすることが大切だと、認識が変わってきているように感じます」
患者たちの想いを形にしたのが、「BAREN」の可愛い医療用ケア帽子。
命を失うかもしれないという衝撃を、「BAREN」の帽子たちは、優しく包み込み、そっと励ましてくれています。
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【プロフィール】原まゆみ さん
大学卒業後リクルートを経てサイバーエージェントにウェブデザイナーとして入社し、新規サービスの立ち上げなどを数多く手がける。結婚後、自宅のリノベーションをきっかけに、二級建築士とインテリアコーディネーターの資格を取得。オーダー家具ブランドのD2Cベンチャー企業にて、インテリアデザイナーとしてスタートアップから携わる。2021年7月子宮頸がんを患い、治療中に感じた「もっと快適でオシャレなウィッグや帽子が欲しい」というホンネと、同じような悩みを抱える女性が大勢いることを知り、医療用ケア帽子のブランドBARENを立ち上げる。開発期間1年を経て、2023年3月販売スタート。
■「BAREN」ホームページ
取材・文:さいだ多恵
写真:原まゆみ
※記事の内容は記載当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
