「胸やけだと思っていた」が命取りになることも…心筋梗塞の意外な症状とは【医師解説】

見逃してはいけない症状や予防のポイントについて、たいや内科クリニックの加藤大也(かとう たいや)院長に解説してもらいました。
医師紹介
愛知県豊田市にある糖尿病や生活習慣病、甲状腺疾患の専門クリニックで、日本糖尿病学会認定教育施設に認定されている「たいや内科クリニック」の院長。糖尿病専門医・甲状腺専門医・総合内科専門医である院長のもと、専門看護師や管理栄養士が連携した「チーム医療」を提供。定期的な料理教室や市民講座の開催を通じて、病気の治療だけでなく、地域住民の皆様の健康増進や予防医療にも力を入れている。
目次
「心筋梗塞」とは、どのような病気なのでしょうか?
心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液と酸素を届ける「冠動脈」の血流が途絶えたり、著しく低下した状態が持続したりすることで、心筋の細胞が傷害され、壊死に至る病気です。

「心筋梗塞」が起こる前に、前兆や見逃してはいけないサインはありますか?
心筋梗塞は、明らかな前兆がないまま突然発症することがあります。一方、発症前に「不安定狭心症」と呼ばれる緊急性の高い状態が現れる場合もあります。

これまで階段や坂道を歩いたときだけ起きていた胸の圧迫感が、軽い動作や安静時にも起こるようになった、症状の回数が増えた、以前より強くなった、長く続くようになった場合は、見逃してはいけない変化です。
これまでに経験したことのない胸の圧迫感や、これまでとは明らかに性質の異なる胸部症状にも注意が必要です。
症状は胸だけに現れるとは限りません。腕、肩、背中、首、顎、みぞおちの痛みや不快感、冷や汗、吐き気、息苦しさとして現れることもあります。
女性でも胸部症状が最も一般的ですが、胸部症状を伴わず、息苦しさ、吐き気、強い疲労感などが前面に現れることもあります。
高齢者や糖尿病のある方では、典型的な胸痛が目立たない場合があるため注意が必要です。
胸の圧迫感などが数分以上続く、いったん軽くなっても繰り返す、冷や汗や息苦しさを伴う、徐々に悪化する場合は、「少し休めば治る」と自己判断せず、ためらわず救急車を要請してください。
症状が一度治まった場合でも、新たに出現した症状や以前より悪化した症状であれば、早急に医療機関への対応が必要です。
「心筋梗塞」の発症リスクを高めやすい生活習慣には、どのようなものがありますか?
心筋梗塞の多くは、冠動脈の動脈硬化を背景に発症します。特に重要な危険因子は、喫煙、高LDLコレステロール血症、高血圧、糖尿病です。これらに加えて、内臓脂肪型肥満、運動不足、多量の飲酒、塩分や飽和脂肪酸を過剰に摂取する食生活なども、直接または他の危険因子を悪化させることを通じて、発症リスクに関係します。

喫煙は血管の内側を傷つけて動脈硬化を進めるだけでなく、血小板を活性化させるなど、血栓ができやすい状態を招きます。
受動喫煙も避けることが大切です。
高血圧や糖尿病、脂質異常症は、症状がなくても冠動脈の動脈硬化を進行させるため、健診で異常を指摘されたまま放置しないことが重要です。
慢性的な睡眠不足、睡眠時無呼吸症候群、不規則な生活、心理的ストレスも、自律神経、血圧、血糖などへの影響や、喫煙・多量飲酒などの行動を介して心血管リスクに関係します。
ただし、心筋梗塞は生活習慣だけで決まる病気ではありません。
加齢、家族歴、家族性高コレステロール血症をはじめとする遺伝的要因、慢性腎臓病なども重要な危険因子です。
ストレスだけを原因と考えず、複数の危険因子を総合的に管理する必要があります。「症状がないから血管も健康」とは限りません。
血圧、血糖、LDLコレステロールの異常は、将来の心筋梗塞を防ぐために、今から向き合うべき重要なサインとして受け止めましょう。
「心筋梗塞」を予防するために、今日からできることを教えてください
心筋梗塞の予防は、特別な健康法ではなく、毎日の生活の中にある修正可能な危険因子を一つずつ減らすことから始まります。

まず、家庭血圧や健診結果を確認し、血圧、血糖、LDLコレステロールに異常があれば、医師と相談しながら適切に管理してください。薬によって数値が改善している場合も、自己判断で中断すると再び悪化することがあるため、治療を継続することが重要です。
年齢、持病、喫煙歴、家族歴などによって目標値が異なるため、単に「基準値内」を目指すのではなく、自分に合った治療目標を主治医と確認しましょう。
食事では減塩を意識し、魚、野菜、果物、海藻、きのこ類、大豆製品、全粒穀類などをバランスよく取り入れましょう。脂身の多い肉、加工肉、揚げ物、菓子類、糖分の多い飲料は控えめにします。
ただし、腎臓病などでカリウム制限を受けている方は、野菜や果物の取り方を主治医に確認してください。
特定の食品だけで心筋梗塞を防げるわけではなく、総摂取エネルギーや栄養バランスを含め、食生活全体を整えることが重要です。
運動は、座っている時間を減らし、今より10分多く歩くことから無理なく始めましょう。体調や持病に問題がなければ、歩行などの中等度の有酸素運動を習慣化し、筋力トレーニングも無理のない範囲で組み合わせることが勧められます。
ただし、胸の痛み、息切れ、動悸、失神などがある方や、心臓病の治療中の方は、運動を始める前に医師へ相談してください。
禁煙は、心筋梗塞を防ぐための最も重要な対策の一つです。自力で難しい場合は、禁煙外来や禁煙補助薬の活用も選択肢になります。
飲酒量をできるだけ少なくし、多量飲酒を避けること、適正体重と十分な睡眠を保つことも大切です。いびきや日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群について医療機関へ相談しましょう。
心筋梗塞は突然発症しますが、動脈硬化は長い時間をかけて進行します。今日の一食、一歩、そして一本吸わないという小さな選択の積み重ねが、未来の自分の人生を守ります。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。


心筋梗塞の多くは、冠動脈の動脈硬化によってできたプラークが破れ、そこに血栓が形成されることで発症します。
ただし、冠動脈の攣縮、冠動脈塞栓、自然発症の冠動脈解離などが原因となることもあります。
さらに、重い貧血、低酸素血症、著しい頻脈や血圧低下などにより、心筋が必要とする酸素と供給される酸素のバランスが崩れて心筋梗塞を起こす場合もあります。
代表的な症状は、胸の中央の圧迫感、締め付けられる感じ、重苦しさです。
必ずしも激痛とは限らず、胸やけのような不快感として現れることもあります。症状が腕、肩、背中、首、顎、みぞおちなどに広がり、冷や汗、吐き気、息苦しさを伴う場合もあります。
高齢者や糖尿病のある方では、胸痛が目立たず、息切れや強いだるさ、意識が遠のく感じなどが主な症状となることもあります。
重症化すると、心室細動などの致死性不整脈、急性心不全、心原性ショック、心臓の壁や弁を支える組織が損傷する機械的合併症などを起こし、突然死に至ることがあります。
治療が遅れるほど心筋の障害が広がり、生命予後やその後の心機能に影響するため、突然の胸の圧迫感や締め付け感が数分以上続く、いったん治まっても繰り返す、あるいは冷や汗、息苦しさ、吐き気などを伴う場合は、症状の強さだけで自己判断してはいけません。
自分で運転せず、ためらわず119番に通報して救急車を要請してください。