「膵臓がん」はなぜ早期発見が難しい?見逃したくない初期症状と“体の変化”を医師が解説

では、できるだけ早く発見するためには、どのような症状や体の変化に注意すればよいのでしょうか。膵臓がんが見つかりにくい理由や、見逃したくない初期症状、早期発見のために知っておきたいポイントについて、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの安江千尋院長に解説してもらいました。
医師紹介
2009年防衛医科大学校医学科卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊横須賀病院、自衛隊舞鶴病院などで内科・消化器内科診療に従事した後、がん研有明病院 下部消化管内科にて内視鏡診療・治療を専門に従事。2020年に同病院副医長に就任。2024年12月、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックを開院。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。
目次
膵臓がんは「早期発見が難しいがん」といわれますが、それはなぜなのでしょうか?
膵臓がんの早期発見が難しいのは、単に「膵臓が体の奥にあるから」だけではありません。

膵臓がんの初期には、どのような症状が現れる可能性がありますか?
膵臓がんの難しいところは、「これがあれば膵臓がん」といえる特徴的な初期症状がほとんどないことです。早期にはまったく症状がないこともあります。

症状が現れる場合には、みぞおちや上腹部の違和感・痛み、背中の痛み、食欲低下、体重減少、腹部膨満感、倦怠感などがあります。
ただし、これらは胃炎や機能性ディスペプシア、胆石症、筋肉や背骨の病気などでもよくみられる症状です。「少し胃の調子が悪い」「最近食欲がない」「腰や背中が痛い」といった、ありふれた症状として始まることがあるため、膵臓がんと結びつきにくいのです。
症状は、がんができる場所によっても異なります。
膵臓の頭側にある「膵頭部」にがんができて胆管を圧迫すると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、尿が濃くなる、便の色が薄くなる、皮膚がかゆくなるといった症状が現れることがあります。
一方、膵体部や膵尾部のがんでは胆管が圧迫されにくいため、黄疸が出ないまま進行することがあります。
もう一つ、見逃したくない変化が糖尿病の新規発症や急な悪化です。
膵臓は消化液を作るだけでなく、インスリンを分泌して血糖値を調節する臓器でもあります。そのため、膵臓がんをきっかけに糖尿病を新たに発症したり、それまで安定していた血糖値が急に悪化したりすることがあります。
ただし、「糖尿病になった=膵臓がん」という意味ではありません。
糖尿病は非常に多い病気で、その大部分は膵臓がんとは関係ありません。大切なのは、特に中高年で、生活習慣が大きく変わっていないのに急に糖尿病を発症した、血糖値が急に悪化した、さらに原因不明の体重減少などを伴う、といった複数の変化が重なっていないかを見ることです。
膵臓がんの初期症状を考えるうえでは、強い症状を待つのではなく、「これまでになかった、説明のつかない変化が続いている」ことに気づくことが重要です。
膵臓がんをできるだけ早く発見するために、日頃から意識しておきたい症状や体の変化はありますか?
一番お伝えしたいのは、「膵臓がん特有の症状が出るのを待たないこと」です。

膵臓がんは早期には症状が乏しいため、症状だけで早期発見しようとすることには限界があります。そのため、「体の変化」「リスク因子」「検査値の変化」「画像所見」を組み合わせて考えることが重要です。
日頃から注意したいのは、原因の分からない体重減少、食欲低下、持続するみぞおちや背中の痛み、黄疸、濃い尿、白っぽい便、新しく発症した糖尿病、それまで安定していた糖尿病の急な悪化などです。
とくに、「ダイエットをしていないのに体重が減る」「食事量を変えていないのに血糖値が急に悪化する」「胃薬を飲んでも上腹部や背中の症状が続く」など、これまでと違う変化が持続する場合には、一度医療機関へ相談することをお勧めします。
そして、症状と同じくらい重要なのが、自分が膵臓がんのリスクを持っているかを知っておくことです。
膵臓がんの家族歴、慢性膵炎、IPMNなどの膵嚢胞性病変、糖尿病、喫煙などは膵臓がんのリスクと関連します。
とくに膵嚢胞や膵管拡張などを以前の検査で指摘されている方は、「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、指示された間隔で経過観察を続けることが大切です。
また、画像検査では「膵臓に腫瘍があるか」だけを見るわけではありません。小さな膵臓がんでは腫瘤そのものが見えなくても、膵管の狭窄・拡張、膵嚢胞、限局性膵萎縮などが先に現れることがあります。こうした異常が見つかった場合には、CTやMRI/MRCP、EUSなどを組み合わせて詳しく調べます。
一方、「毎年CA19-9を測っていれば安心」「腹部エコーが正常だったから膵臓がんはない」と考えるのは適切ではありません。
腫瘍マーカーは早期膵がんでは正常のことがあり、腹部エコーも膵臓全体を必ず観察できるわけではないからです。
膵臓がんの早期発見には、残念ながら現時点で「これ一つを受けておけば大丈夫」という検査はありません。
だからこそ、
「いつもと違う体の変化を放置しない」
「自分のリスク因子を知る」
「過去の画像検査で指摘された膵臓の異常を放置しない」
この3点が非常に重要です。
膵臓がんは早期発見が難しいがんですが、「症状が出るまで待つ」のではなく、小さな変化から膵臓を詳しく調べるべき人を見つけ、適切な検査につなげることが、現在の早期発見の基本的な考え方です。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。


大きな理由は、
1.早期には症状がほとんど出ない
2.小さながんは画像でも捉えにくい
3.胃がんや大腸がんのような一般向けの有効な検診方法が確立されていない
という3点です。
膵臓は胃の後ろ、背骨の前あたりにある細長い臓器です。胃や大腸のように通常の内視鏡で直接見ることはできません。
腹部超音波検査でも観察できますが、胃や腸のガス、体格などの影響で、膵臓全体を十分に観察できないことがあります。そのため、膵臓がんが疑われる場合には、CT、MRI/MRCP、超音波内視鏡(EUS)などを組み合わせて調べます。
さらに重要なのは、ごく早期の膵臓がんでは、「がんの塊」そのものが画像にはっきり見えないことがあるという点です。
がんが小さい段階では、腫瘤そのものではなく、膵液が流れる「膵管」の狭窄やその上流側の拡張、膵嚢胞、膵臓の一部分だけが痩せる「限局性膵萎縮」などの間接的な変化が、発見の手掛かりになることがあります。
早期膵がんの診断では、こうしたわずかな変化を見逃さないことが非常に重要です。
また現在のところ、胃がんの胃内視鏡検診や大腸がんの便潜血検査のように、症状のない一般の人を対象として広く行える、確立した膵臓がん検診はありません。
CA19-9などの腫瘍マーカーも、早期では上昇しないことがあり、単独で早期発見に用いることには限界があります。
つまり膵臓がんは、「症状が出てから調べる」「腫瘍マーカーだけで見つける」「画像で腫瘤だけを探す」という方法では早期発見が難しいがんです。
だからこそ、症状だけでなく、糖尿病の変化、家族歴、膵嚢胞などのリスク因子や、画像検査での小さな変化をきっかけに精密検査へつなげることが重要になります。