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AIに健康相談しても大丈夫?管理栄養士が実践する「情報収集」と「判断」を分ける、上手な使い方

公開日: 2026年09月01日
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健康に関するちょっとした疑問を、AIに聞いたことはありませんか?ふと気になった症状や健康診断で見慣れない数値。夜中でも、どこにいても、すぐに答えが返ってくる手軽さは魅力です。一方で、AIが返す答えは、いつでも正しいとは限りません。その回答をどう受け取るかで、AIは頼れる味方にも、思わぬ落とし穴にもなります。

そこで本記事では、管理栄養士としてライティングや栄養相談に携わり、日常的にAIを活用している筆者が、健康に関する情報をAIから得る際に知っておきたい注意点と、上手に活用するためのコツをご紹介します。

執筆

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中村 瑞樹
管理栄養士

「食と健康に悩む人が安心して戻れる場所をつくる」をモットーに、栄養・健康分野の記事執筆を行う。延べ1,200名以上の食事相談に携わった現場経験をもとに、科学的根拠をわかりやすく日常の言葉に翻訳することを得意とする。沖縄県在住で琉球料理の普及・伝承活動も行っている。趣味は健康。

■公式note「みうらぼ|食と体をととのえる場所」

AIの「自信」は、正しさとは別のもの

生成AIには、事実に基づかない情報をもっともらしく作り出してしまう「ハルシネーション」と呼ばれる現象があります。

総務省と経済産業省がまとめたAI事業者ガイドラインでも、技術的な対策は進んでいるものの現時点では完全に抑え込めるものではなく、利用する側が答えの正しさを確かめることが望ましいとされています。

やっかいなのは、間違っているときでも、AIからは自信がありそうな返答がかえってくることが少なくないことです。

旅行や料理について調べる程度なら、多少の間違いがあっても大きな問題にならないかもしれません。けれども、体調や病気、薬などに関する情報では、間違った情報が健康や命に関わる問題につながってしまうかもしれません。

AIの回答は、言い切り方や文章の自然さではなく、その内容に根拠があるかどうかを確認することが大切です。

AIへの過信を招く「自動化バイアス」

生成AIを利用するときに注意したいのは、AIそのものの性質だけではありません。実は、私たち利用する側にも、ある認知的な傾向があります。

それが「自動化バイアス」です。

これは、AIやITなどによる自動化された判断を、必要以上に信頼してしまう傾向のことをいいます。

栄養相談でお話を伺っていると「AIがそう言っていたので、そうしています」という話を耳にすることがあります。自身の健康課題に向き合い、できることに取り組むのは前向きなことです。

一方で「AIがそう言っている」ということが、そのまま判断の理由になっている場合には、少し注意が必要です。

AIから返ってきた答えは、あくまで情報のひとつです。

自分の体に当てはめてよいのか、ほかの情報と矛盾していないか、信頼できる根拠があるのか。一度立ち止まって考えることが、健康に関する情報をAIから得るときには大切です。

そこでここからは、管理栄養士の私が考えるAIを上手に使うコツを3つご紹介します。

AIを上手に使うコツ①:役割だけでなく、条件や状況も伝える

生成AIのノウハウを伝える勉強会や書籍などで「管理栄養士として答えて」のように役割を与えるとよい、という話を聞いたことがあるかもしれません。

しかし、海外の研究で4系統のAIモデルと2,410問の事実質問を用いて検証したところ、役割を与えるだけでは正答率は向上しなかったと報告があります。

一方、別の研究では、質問する人の立場や目的、AIに求める役割、具体的な質問などを盛り込んだ、情報量の多い質問文を使ったところ、回答の質が有意に高くなりました。

つまり、AIに質問するときは「誰が」「何のために」「どんな答えを求めているのか」といった条件や状況を、できるだけ具体的に伝えることがポイントです。

たとえば、血圧が高めで食事の減塩について知りたいとします。

●よくない例
プロンプト:「あなたは管理栄養士です。減塩の食事について教えて。」

生成AIの回答:

返ってくるのは、食事で塩分を控える方法だけです。もちろんこれらの情報も有益ですが、血圧を下げるための食事療法としては十分な情報とは言えません。

●よい例
プロンプト:「50代女性です。健康診断で血圧が高めと指摘されました。生活習慣を見直したいと思っています。あなたは生活習慣病予防を専門とする管理栄養士として、専門的な内容をわかりやすく説明してください。減塩のほかに見直せる食習慣を教えてください」

生成AIの回答:

このように尋ねると、減塩だけでなく、余分な塩分(ナトリウム)を体外に排出する働きをするカリウムを補う食習慣、食生活全体で塩分を適正にする方法、アルコールの適正摂取などについても回答が得られます。

質問に自分の状況や目的を具体的に加えることで、より自分に合った情報を引き出しやすくなるのです。

AIを上手に使うコツ②:「根拠は?」と聞く

回答を受け取ったら、そこで終わらせずに「その根拠になっている情報は何ですか」「出典を教えてください」と続けて尋ねる習慣をつけてみてください。

そして、AIが示した出典を実際に確認するところまでがワンセットです。

論文や公的機関の資料など、出典そのものが実在するかを確認し、できれば元の資料に目を通して、AIの回答と内容が一致しているかも確かめましょう。

ページが存在しないリンクであったり、架空の資料である場合は少なくありません。また、出典が実在していたとしても、それだけでAIの回答が正しいとは限りません。

たとえば、特定の年代や条件の人を対象とした研究結果を、すべての人に当てはまるかのようにAIが捉えて説明していることや、研究結果の一部だけを情報源として取り上げ、実際の結論とは異なる伝え方をしている可能性もあります。

もう一歩踏み込んで、「その研究結果は、今回のようなケースにも当てはまりますか?」「この情報が当てはまらないケースはありますか?」と尋ねてみるのもよいでしょう。

AIを上手に使うコツ③:「調べる」と「判断する」を分ける

AIが得意なのは、情報を集めて整理したり、難しい専門用語をわかりやすく言い換えたりすることです。

たとえば、健康について調べたいときに基本的な情報を整理してもらったり、病院を受診する前に「何を聞けばいいか」をまとめてもらったりする使い方とは相性がよいでしょう。

一方で、その情報が「自分の場合にも当てはまるのか」「この方法を実際に試してよいのか」と判断することは、別の話です。

そのため、AIに相談するときは、まずAIで調べる→気になることや疑問を整理する→必要に応じて医師や管理栄養士などの専門家に相談する、という使い方がおすすめです。

AIに判断を任せるのではなく、専門家に相談するための「下調べ」や「相談の準備」に活用する。

そんな距離感で使うと、AIの便利さを生かしながら、より安心して健康情報と付き合うことができます。

まとめ

生成AIは、もっともらしい文章を作る仕組みであって、その正しさを保証してくれるものではありません。

だからこそ、AIにすべての判断を任せるのではなく、情報を集めたり、疑問を整理したりするための入口として上手に活用するのが大切です。

AIから得た情報をそのまま信じるのではなく、根拠を確かめ、必要に応じて医師や管理栄養士などの専門家に相談する。AIの得意なことを活かしながら、最後の判断は自分自身、そして専門家と一緒に行う。

そんな距離感を意識することが、健康情報とAIを上手につき合うコツなのかもしれません。


<参考文献>
・非営利法人 医療AIプラットフォーム技術研究組合「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」2025年7月11日

・総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」

・Journal of Medical Internet Research「Assessing the Accuracy and Reliability of Large Language Models in Psychiatry Using Standardized Multiple-Choice Questions: Cross-Sectional Study」2025

・npj Gut and Liver「Across generations, sizes, and types, large language models poorly report self-confidence in gastroenterology clinical reasoning tasks」

・Findings of the Association for Computational Linguistics: EMNLP 2024「When "A Helpful Assistant" Is Not Really Helpful: Personas in System Prompts Do Not Improve Performances of Large Language Models」

・JMIR AI「Enhancing AI Chatbot Responses in Health Care: The SMART Prompt Structure in Head and Neck Surgery」

・厚生労働省eJIM「統合医療」情報発信サイト/情報の見極め方

・日本病院薬剤師会「業務効率化と患者安全を実現する生成AIの適切な利用」

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