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水分を摂っているのに脱水が進む…?医師が警告する「ペットボトル症候群」の本当の怖さとは

公開日: 2026年08月08日
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熱中症対策でスポーツドリンクやジュースを飲んでいる人は要注意。糖分の多い飲み物を水代わりに飲み続けると、「ペットボトル症候群」と呼ばれる高血糖の状態を招くことがあります。

重症化すると命に関わることもある「ペットボトル症候群」の仕組みや危険性、夏場に気を付けたい飲み物の選び方について、たいや内科クリニックの加藤大也(かとう たいや)院長に解説してもらいました。

医師紹介

愛知県豊田市にある糖尿病や生活習慣病、甲状腺疾患の専門クリニックで、日本糖尿病学会認定教育施設に認定されている「たいや内科クリニック」の院長。糖尿病専門医・甲状腺専門医・総合内科専門医である院長のもと、専門看護師や管理栄養士が連携した「チーム医療」を提供。定期的な料理教室や市民講座の開催を通じて、病気の治療だけでなく、地域住民の皆様の健康増進や予防医療にも力を入れている。

「ペットボトル症候群」とは、どのような症状を引き起こすのでしょうか?

「ペットボトル症候群」とは、糖分を多く含む清涼飲料水を水代わりに大量に飲み続けることをきっかけに、著しい高血糖とケトーシスを起こす病態の通称です。

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正式な病名ではなく、医学的には「清涼飲料水ケトーシス」または「ソフトドリンクケトーシス」と呼ばれます。日本糖尿病学会の資料でも、若年の肥満男性に比較的多い病態として紹介されていますが、年齢や性別、体格にかかわらず起こる可能性があります。

背景には、本人が気づいていない2型糖尿病や、血糖値が上がりやすい体質が隠れていることがあります。

血糖値が著しく上昇すると、尿中に排泄されたブドウ糖と一緒に多くの水分が失われる「浸透圧利尿」が起こります。そのため、尿の回数や量が増え、強いのどの渇きを感じるようになります。

ここで渇きを癒やそうとして、ジュースや加糖炭酸飲料、スポーツドリンク、加糖コーヒーなどをさらに飲むと、血糖値は一層上昇します。すると、さらに尿が増え、脱水とのどの渇きが悪化し、また甘い飲料を飲んでしまいます。

つまり、この病態の本当の怖さは、「飲んでいるのに脱水が進む」悪循環です。水分補給では、飲んだ量だけでなく、「何を飲んだか」が体の状態を大きく左右します。

    「ペットボトル症候群」が重症化すると、どのような危険がありますか?

    重症化すると「糖尿病性ケトアシドーシス」という命に関わる状態に進むことがあります。

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    インスリンの作用が著しく不足すると、血液中にブドウ糖が多くあっても、筋肉や脂肪などの細胞はそれを十分にエネルギーとして利用できません。そこで体は脂肪を分解してエネルギーを作ろうとし、その過程で「ケトン体」が増加します。

    ケトン体が増えている状態を「ケトーシス」といいますが、それだけで直ちに「糖尿病性ケトアシドーシス」と診断されるわけではありません。

    「糖尿病性ケトアシドーシス」は、インスリン作用の高度な不足によって、高血糖、ケトン体の増加、血液が酸性に傾く代謝性アシドーシスを来した救急疾患です。日本糖尿病学会の診療ガイドラインでは、緊急の輸液、電解質補正、インスリン治療が必要な病態とされています。

    初期には、強い口渇、多飲、多尿、急激な体重減少、強い倦怠感などがみられます。進行すると、吐き気、嘔吐、腹痛が現れ、さらに悪化すると「クスマウル呼吸」と呼ばれる深く大きな呼吸、意識障害、昏睡に至ることがあります。

    また、著しい高血糖と高度の脱水を主体とする「高血糖高浸透圧症候群」という別の高血糖緊急症を起こすこともあります。

    これは一般に高齢の2型糖尿病患者に多い病態ですが、清涼飲料水の大量摂取や感染症などが、高血糖を悪化させるきっかけになる可能性があります。「糖尿病性ケトアシドーシス」と「高血糖高浸透圧症候群」は、いずれも緊急治療を要します。

    「飲み物をたくさん飲んでいるから、脱水ではない」と考えるのは危険です。高血糖では、飲んだ水分以上に尿から水分が失われ、脱水が進行することがあります。

    呼びかけへの反応がおかしい、自力で水分を飲めない、嘔吐を繰り返す、深く大きな呼吸をしている、ぐったりして動けないといった場合は、様子を見ず、直ちに救急車を呼んでください。

      夏場に熱中症対策をしながら、「ペットボトル症候群」を防ぐポイントを教えてください

      夏の日常的な水分補給は、水、無糖のお茶、無糖の炭酸水など、糖分を含まない飲料を基本にしましょう。

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      大切なのは、一度に大量に飲むことではなく、のどが渇く前から、少量ずつこまめに補給することです。

      スポーツドリンクは、長時間の運動や屋外作業で大量に汗をかき、水分と電解質を失った場面では役立ちます。しかし、商品によっては糖質を多く含むため、軽い発汗しかない日常生活で、水代わりに何本も飲み続けることは勧められません。

      通常どおり食事が取れており、発汗も軽度であれば、水や無糖飲料と食事から水分と塩分を補える場合が多いでしょう。

      一方で、長時間の運動や高温環境での作業など、大量発汗が続く場面では、活動時間、発汗量、体調、持病に応じて、電解質を含む飲料を取り入れましょう。

      なお、経口補水液は、脱水時に失われた水分と電解質を小腸から吸収しやすい組成に調整した飲料です。下痢、嘔吐、発熱、過度の発汗などによる脱水時には有用ですが、健康な人が日常の水分補給として常に飲み続けるための飲料ではありません。消費者庁も、脱水状態でない人が普段の水分補給として飲むことを目的としたものではないと説明しています。

      経口補水液には一般的な清涼飲料水より多くのナトリウムが含まれます。高血圧、心不全、腎機能障害などがあり、水分や塩分について指示を受けている方は、自己判断で大量に飲まず、主治医の指示を優先してください。

      スポーツドリンクや清涼飲料を利用する際は、「甘く感じるかどうか」だけで判断せず、栄養成分表示の炭水化物または糖質の量を確認しましょう。糖尿病のある方や血糖値が高い方は、熱中症対策であっても、糖分を多く含む飲料を水代わりに常用しないことが重要です。

      甘い飲料を飲んでものどの渇きが治まらない、尿の量が異常に増えた、急に体重が減った、吐き気や強いだるさがある場合は、単なる夏バテや熱中症と決めつけてはいけません。速やかに医療機関を受診してください。

      熱中症を防ぐための水分補給が、かえって高血糖を悪化させてはなりません。必要なのは、ただ「たくさん飲む」ことではなく、体の状態と発汗量に合った飲み物を、正しく選ぶことです。

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        ※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。