眠らないと人間はどうなってしまうの?睡眠不足が身体に与える影響

診察で睡眠時間を聞くと「5時間くらいですが、もう慣れました」と答える方がいます。ところが話を続けると、仕事のミスが増えた、甘いものが欲しくなる、家族にイライラする、といった変化が出ています。身体が慣れたのではなく、寝不足の状態が普通になっているだけかもしれません。
医師紹介
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。
Xアカウント:@maemae_med(まえまえ医師)
目次
寝不足の翌日は「注意力や判断力」が落ちやすい
一晩、睡眠時間が足りないだけでも、持続的な注意力が落ち反応が遅くなることがあります。例えばこういった小さな変化です。
- 同じ文章を何度も読み返す
- 簡単な判断に時間がかかる
- 普段なら流せる一言に腹が立つ
毎晩1〜2時間の不足でも、数日続けば影響は積み重なります。厄介なのは、自分では「今日も動けている」と感じやすいことです。強い眠気では、起きているつもりでも一瞬眠る「マイクロスリープ」が起こります。運転中ならその一瞬が事故につながります。
さらに寝不足が日常になると、影響は頭だけでは済みません。食欲や血糖、血圧、免疫の調整が乱れやすくなり、肥満、糖尿病、高血圧、うつ病などとの関連も強くなります。診察でも、気分や食欲の不調をたどると、その土台に睡眠不足が見つかることがあります。
眠っている間も脳と身体は働いている
睡眠は身体の電源を切って何もしていない時間ではありません。脳と身体が、昼間にたまった仕事を片づける時間です。
深い睡眠では、成長に関わるホルモンが分泌され、細胞や組織の修復が進みます。また、睡眠は記憶の定着や気分の調整にも関わります。
睡眠を削れば起きていられる時間は増えます。でも実際には、翌日の集中力や気持ちの余裕を前借りしている状態に近いのです。
眠る時間が足りない日はどうすればいい?
いちばんの対策は、睡眠そのものを増やすことです。ただ、仕事や育児があれば「早く寝ましょう」だけでは解決しません。
診察では、まず15分増やせる場所を探します。
- 夜のスマホを早めに置く
- その日のうちに済ませなくてもよい用事は、翌日に回す
いきなり理想の睡眠時間を目指すより、続けられる調整の方が役に立ちます。
日中に眠気が強い日は、午後の早い時間に20分ほど仮眠を取ると、頭が少し戻りやすくなります。
カフェインも一時的には助けになりますが、夕方以降に飲むと次の睡眠を邪魔し、また寝不足になることがあります。寝酒も、寝つきはよく感じても睡眠後半の質を悪化させるため、おすすめできません。
残業や家事、育児で睡眠を削っているなら、個人の工夫だけでは限界があります。家族の分担や働き方を変えることも、立派な睡眠対策です。
十分寝ても眠い、いびきや息苦しさがある、生活に支障が出るほど眠れない。そんなときは、睡眠時無呼吸や不眠症が隠れていることがあります。我慢を続けず、医療機関に相談してください。
まとめ
寝不足は、眠気だけの問題ではありません。まず判断力や感情の余裕に現れ、続けば身体にも影響します。仮眠やカフェインでしのぐだけでなく、少しでも睡眠を増やせる時間を探すことが大切です。
<参考文献>
・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
・National Heart, Lung, and Blood Institute. “Sleep Deprivation and Deficiency.”
https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-deprivation/health-effects
https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-deprivation/healthy-sleep-habits
・Wüst LN, et al. “Impact of one night of sleep restriction on sleepiness and cognitive function: A systematic review and meta-analysis.” Sleep Med Rev. 2024;76:101940. doi:10.1016/j.smrv.2024.101940
・Tajiri E, et al. “Acute Sleep Curtailment Increases Sweet Taste Preference, Appetite and Food Intake in Healthy Young Adults: A Randomized Crossover Trial.” Behav Sci. 2020;10(2):47. doi:10.3390/bs10020047
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