「気持ちが沈む」「頭の中がいつも騒がしい」…その不調、原因はSNSの見過ぎかも?

SNS・情報過多によるストレスについて、精神科医の鈴木枝里子医師に解説してもらいました。
医師紹介

うつ病、不安障害、発達障害、認知症まで、幅広い心の不調に寄り添う精神科医。埼玉県指定「認知症疾患医療センター」で地域の中核を担い、丁寧な診察と最新のエビデンスに基づく治療で、「もう少し楽に生きられる毎日」を一緒に目指している。医学博士、精神保健指定医、日本専門医機構認定 精神科専門医・指導医、日本精神神経学会 認知症診療医、認定産業医。
医療法人社団 ユーアイエメリー会
医療法人大壮会 久喜すずのき病院
目次
SNSによって生まれた新たなストレスとは?
SNSが日常に浸透したことで、私たちの生活は大きく変わりました。いつでも誰かとつながれる一方で、これまでになかった種類のストレスも生まれているとされています。
代表的なものとして、次のような状態が挙げられます。
■比較による自己評価の低下
他者の「充実した日常」「成功体験」「幸福そうな姿」が絶え間なく流れ込んでくることで、無意識のうちに自分と比較してしまうことがあります。「自分はなぜこんなに上手くいかないのか」という感覚が積み重なると、自己肯定感の低下につながる可能性があるとされています。
■常時接続による緊張の持続
通知が来るたびに反応しなければならない状況や、既読・返信のプレッシャーが、精神的な緊張状態を慢性化させる可能性があります。「オフになれない」状態が続くことで、こころと体が十分に休まらないケースも報告されています。
■ネガティブ情報の過剰摂取
ニュースやSNSでは、不安をあおる情報や、対立・批判を含むコンテンツが拡散されやすい傾向があります。こうした情報に繰り返しさらされることが、漠然とした不安感や無力感につながることがあるとされています。
あなたのSNS依存度をチェック!
ご自身がどの程度SNSに依存してしまっているかを把握するためのチェックリストをご紹介します。複数個当てはまる場合は、SNSとの付き合い方を見直すサインかもしれません。
- スマホの通知を、5分に1回以上確認してしまう
- 特に目的がなくても、無意識にSNSを開いてしまう
- SNSを見ていて、気がつけば30分以上経っていることが多い
- 他人の投稿を見て、落ち込んだり焦りを感じることがある
- 「いいね」やコメントの数が気になって何度も確認してしまう
- 寝る直前までSNSを見てしまい、寝つきが悪くなる
- 起床後すぐにSNSをチェックするのが習慣になっている
- SNSを見られない状況になると、そわそわ・不安を感じる
- 現実の人間関係よりも、SNS上の反応を優先してしまう
- SNSを見たあとに、疲労感や気分の落ち込みを感じることがある
<SNS依存度の目安>
【0〜2個:問題なし】
日常的な範囲の利用と考えられます。現時点では大きな問題はありません。
【3〜5個:注意ゾーン】
SNSの使い方がやや習慣化しており、気分や集中力への影響が出始めている可能性があります。
一度「見る時間を決める」など、軽い制限を試すと変化が分かりやすい段階です。
【6〜8個:要調整ゾーン】
行動のコントロールが難しくなりつつある状態です。
この段階では、睡眠の質の低下や、軽度の不安・抑うつ傾向が見られることもあります。
→ 通知オフ・使用時間制限(1日1〜2時間以内)など、具体的な介入が必要です。
【9個以上:医療的介入を検討するレベル】
SNSによる刺激が、明らかに気分や生活に影響を与えている可能性があります。
軽度うつ状態や不安症状の一因となっているケースも臨床上少なくありません。
→ 一度SNSから距離を置くことに加え、状態が続く場合は専門家への相談も検討してください。
なお、このチェックは正式な診断ではありませんが、 臨床的には「6個以上」で生活への影響が出ているケースが多い印象です。
とくに重要なのは次の2点です
「やめようと思ってもやめられない(コントロール低下)」
「使った後に気分が落ちる(報酬ではなく負担になっている)」
このふたつが当てはまる場合、単なる習慣ではなく、依存に近い状態に入り始めているサインと考えられます。
SNS以外にもある「なんとなく不調」を招く要因
現代人が感じる“なんとなく不調”には、SNS以外にも複合的な要因があると考えられています。
■働き方の変化
リモートワークの普及により、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、切り替えができないまま疲労が蓄積するケースが増えているとされています。
■つながりの変化
オンラインでのやりとりが増える一方で、対面でのコミュニケーションが減少したことで、「孤立感」を感じやすくなっているという指摘もあります。
■将来への不確実性
経済・社会環境の変化が速く、先の見通しが立てにくい状況が続くことで、慢性的な不安感が生じやすい環境になっているとも言われています。
こうした背景が重なることで、特定の「原因」が見当たらないまま、じわじわと心身に影響が出てくることがあると考えられています。
日常でできる「なんとなく不調」の対処・セルフケア
もし“なんとなく不調”を感じたときは、まず以下のような対処、セルフケアを行ってみましょう。
1.SNSとの距離を意識する
1日のなかでSNSを見ない時間をつくったり、通知をオフにする時間帯を設けたりするだけでも、精神的な緊張が和らぐことがあるとされています。「スマートフォンを手放す時間」を意識的につくることが、“なんとなく不調”改善のためのひとつの出発点になるかもしれません。
2.睡眠・食事・運動の基本を整える
こころの状態は、身体の状態と密接につながっているとされています。規則正しい睡眠、バランスの取れた食事、軽い運動を習慣化することが、メンタルの安定にも影響する可能性があると言われています。
3.「誰かに話す」ことを大切にする
不調を感じたとき、信頼できる人に話すだけでも、気持ちが軽くなることがあります。「相談するほどのことでもない」と感じる段階でも、言葉にして誰かに聞いてもらうこと自体に意味があるとされています。
こんなときは我慢せずに受診の検討を
上記のようなセルフケアを試みても変化が感じられない場合は、専門家への相談を検討することもひとつの選択肢です。
目安として、次のような状態が続く場合には、受診の検討をおすすめします。
- 眠れない、疲れが取れない状態が2週間以上続いている
- 以前は楽しめていたことに、まったく興味が持てなくなっている
- 仕事や日常生活に支障が出るほど、気力・集中力が落ちている
- 理由のない不安感やイライラが続いている
- SNSやニュースを見るたびに気持ちが沈む日が増えている
精神科や心療内科は「深刻な状態になってから行く場所」ではなく、「こころのことを相談できる場所」です。“なんとなく不調”という感覚そのものを、まず話してみることが、状態を整えるきっかけになる可能性があります。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。
